03/10 故大村しげさんの生活文化
料理研究家で随筆家だった故大村しげさん(1918-1999)の生活用品を通して現代日本の生活文化を探る研究が国立民族学博物館(吹田市千里)で始まっており、その一環として、バリ時代の生活ぶりをたどる調査のため、研究班の一行が先日、ウブドへ訪ねてこられました。 大村さんを最もよく知る鈴木靖峯さんが日本へ出掛けていて不在のため、私と当時を知るウブドの人たちが案内役を勤めました。大村さんは永年、京都の本能寺に隣り合わせた町家に住み、京都独特の料理おばんざいや、京都の風習などについて新聞や雑誌に発表、「京のおばんざい」(秋山十三子、平山千鶴共著)など数多くの著作を残されています。 また晩年はウブドに住んでいた鈴木さんの所へ身を寄せ、「車椅子の目線で京都・バリ暮らしの旅」などを出版されました。 几帳面な大村さんが町家に残していた箪笥などの家具、布、空き箱など約5万点が民博関係者の目にとまって、そっくり同館に保存・展示されることになり、合わせて、それらの「もの」を通して現代の生活文化に迫る共同研究が始まったようです。
今回の訪問は共同研究者のうち代表・総括の横川公子・武庫川女子大学教授(生活環境・美学担当)大塚滋・元同大教授(食文化)角野幸博・同大教授(都心居住)の3人。
大村さんの住まいだった隣りのビンタン・パリの中の建物、ビラ・ビンタンのミーティング・ルームに設けている「大村しげ文庫」、よく食事をしたカフェ・ビンタン、ウブドの街中のカフェ、そしてガムランやバリ舞踊、布や絵を求めて訪ねたバリ東部のカマサン村、先住民のトゥガナン村などを、精力的に回りました。 さらに大村さんのお世話をしたり、買い物に同行したスワティさん、ボンさん、カデさん、ストウさんなどに聞き取り調査をして帰られました。 横川教授の話では「4年間で、ようやく残されたものの整理・記録が出来ました。これらの研究はこれから」ということです。研究の成果に期待したいですね。
03/15 ラビアンローズ閉店
ウブドの名物バー「ラビアンローズ」が閉店しました。バーをやっていたバリの知名人「シロウさん」が、バリと日本の比重を少し変えることにしたためです。 ラビアンローズとシロウさん、ウブド村暮らし通信メンバーの中にも店を訪れた人、名前を聞いたことがある人が大勢いると思いますので、少し経緯を報告します。昨日、シロウさんがうちへ久しぶりに顔を見せ、いきさつを語ってくれました。彼は今、60歳代前半。かつて大阪のキタ新地にバーを持ち、キタやミナミで羽振りをきかしていたようですが、ある時、訪れたバリにすっかりはまり、50代後半で、すっぱりと店をたたみ、ウブドに住み着くようになりました。 そして余生の片手間、ウブドの西部、チャンプアン橋を少し北へ上がった所、ネカ美術館の前にバー「ラビアンローズ」を開きました。
ここには欧米人、日本人を問わず、バリ在住者、長期滞在者や、観光客が夜ごと訪れ、ジャズやクラシック、各国の民俗音楽などのライブも行われ、社交場にもなっていました。 しかし、このところバリに住むについて、シロウさんの中に心境の変化が起こり、たまたま親交のあった書道家が九州の小島に持っている、古い民家を改造した自宅を音楽や工芸などに興味を持つ人たちのサロンにするプロジェクトを立ち上げることにしたということです。 大阪時代の知己、ピーターや美輪あきひろ、宮沢りえら映画俳優、歌舞伎役者、鉄工芸家などを招き、時にはライブ、時に展覧会などを小島で開く夢を、シロウさんは熱く語ってくれました。
親交のある書道家はウブドのプンゴセカンにも家を持っており、冬の寒い間は、ここへ逗留しに来るそうです。4年ほど前に建てた自宅は長期賃貸に出すそうで、借り手を捜しています。
広い人脈を持つシロウさんが居なくなるのは、寂しいですが、彼の新しい夢が大きく花開くよう、応援したいと思います。もっと具体的になったら、また皆さんにお知らせします。